2012年2月23日木曜日

読書 雾锁天途 (3)

あっという間に読み終わった。

全部で330ページほどなのだが、ほぼ一週間という時間で全部読み終わったのは、
最速記録だと思う。

先週は北京への出張があったので、飛行機の中でずっと読んでいたり、
虹橋空港との地下鉄2号線の往復の車中でも読んでいたので
(浦东に住んでいるので地下鉄の車中はかなり時間がある)、
普段の週に比べて読む時間が多かったのは確かだが、それにしても早かった。

いままで書いてきたように、翻訳物も含めて多くの中国語の本を読んできたが、
こんなに分かりやすい文体は、アガサ・クリスティの翻訳本以来かもしれない。

ミステリーといっても、気軽に読めるタイプのものと、重々しくてとっつきにくいものがある。

マンガで例えて言うと気軽に読めるのが「コナン」で、
重々しいのが「金田一少年」という感じだろうか。

この本は気軽に読めるタイプの典型的な例だ。

ミステリーというのは、結末でいかに「作者にビックリさせられるか」というのが、
面白さのひとつの基準である。

もちろん、これは必ずしも「犯人が意外なことにビックリさせられる」とイコールではない。

その点、この本はその基準はクリアしているように思う。


こんど機会があったら、この作者の本はもう一度読んでみよう。

2012年2月21日火曜日

読書 雾锁天途 (2)

高竞が3人の失踪事件に遭遇してから3年後、再び事件が始まる。

あの電車の中にいた女の子が死体で発見されたのだ。

3年前のことがずっと気になっていた高竞は、新聞でその事件を知り、
友達の莫兰と一緒に事件のことを調べていく。

まあ、もうあらすじは書かないことにしよう。
今の時点ではまだ2/3ぐらいしか読み終わってないので、結末もしらないし。

現代の推理小説らしく、事件の話だけでなく、主人公莫兰の家族の話、
高竞の家族の話、莫兰と高竞の恋愛などが重なり合いながら進行していくので、
いったいこれは推理小説なのか?、とちょっと思ったりもしたが、まあ十分推理小説である。

莫兰は15歳で、高竞が20歳、という若干不自然な感じがぬぐえない設定だし、
警察でバイトしている親戚に過去の事件の資料をコピーしてもらうとか、
医者をしている莫兰の父親が過去に世話をしたという理由で、
銀行の人が事件関係者の口座のお金の出入りを調べてくれるとか、
ちょっとあり得ない(中国ならあり得るかも、と思うのも確かだが)方法で捜査を進めるのだが、
その辺はご愛敬、という感じであろう。

この本の中でもっとも面白い登場人物は莫兰の父親である。

すごく頭がよいのだが、常識外れの方法で物事をすすめたり、変なことに異常にこだわったりする。
昔風の本格推理小説に探偵役として登場したらピッタリだと思う。

ただ、 莫兰の恋愛に関しては親らしく、高竞に「莫兰が18になるまで我慢しろ」と言いつつ、
「私も若いときはいろいろあったから」などど二人を暖かく見守っている。

莫兰自身は、非常に頭が良く、料理も上手、しかも可愛い、という、
まあリアリティという観点からはコメントしにくい人物像なのだが、
本の中では、若いがゆえの失敗をしたり、それなりに感情移入することができる。

高竞は「3年も待つのは長すぎる」などと思いながらも、
とてもまじめに言いつけを守る。

まあそうでないと小説にならないだろうが。


2012年2月18日土曜日

読書 雾锁天途 (1)

先週土曜日、また中山公園駅のところにある"上海书城"にいって新しい本を買った。

2階にあがってすぐのところに、中国人作家ミステリーコーナーみたいなのがあり、
前々から中国ミステリーを読んでみたいと思っていたので、そこで探すことにした。

いままで、結構たくさん中国語の本を読んできたが、ミステリーは専門用語とかあるし、
敷居が高いのでは、と思って、避けてきたところがあるが、まあ、もうそろそろ大丈夫だろう。

いつもの通り、予備知識がなんにもないので、本の帯に書いてある宣伝文句が頼りだ。

最初に目に飛び込んできたのが、

「中国推理少说女王最新力作」

と書いてある帯であった。

作家名が「鬼马星」となっていて「ペンネームにしたってちょっとインパクトありすぎでは?」
と思ったが、内容は「史上最聪明的女中学生 少女莫兰系列」ということなので、
少女が探偵役ならまあそんなに凄惨とかいう話でもないだろうし、
たぶん読みやすいだろうから、と思い、これを買うことにした。

しかし、いつも思うのだが、中国の本は安い。
この本も330ページもあるのにたった20元である(今のレートだと日本円で250円)。


序章は、この本のもう一人の主人公、というかワトソン役で、当時高校生の"高竞"が
北京から故郷のS市に戻る電車の中から始まる。

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彼が座ったボックス席で前に座った若い女の子が、彼のとなりのおじさんに向かって、
「トランプやらない?(会打牌吗?)」と声をかける。

となりのおじさんは息子が止めるのを制して、その誘いに乗り、賭トランプが始まる。
女の子は自分の大学の学費を元手にしようとしたので、
こちらも一緒にいた弟がやめさせようとするが、全く聞かない。

そうこうしているうちに、北京で友達と遊んで疲れていた高竞は眠ってしまった。

「起きろ」と言われて目を覚ますと、おじさんの息子が立っていた。

おじさんと女の子とその弟が3人ともいなくなってしまったのだ。

息子や高竞や車掌が、電車の中を全部探したが影も形もない、謎の失踪。
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序章はここで終わり、話は3年後、高竞が20歳になったところから再スタートする。

なかなか、悪くない出だしだと思った。

2012年2月8日水曜日

新HSK(4) 六級の写作

さて、春節休みも終わったし、そろそろ本気で準備を始めなくては。

六級の作文(写作)は、400文字程度の文を書くものである。

旧HSK高等の作文もやはり同様に400字程度の文を書くものだが、
与えられるテーマはかなり異なる。

旧HSK高等の作文は、ある題目が与えられた自由作文である。

例えば題目が「ペットを飼うことの良いところと悪いところ」とあったら、
自分で構成等を考えて400字程度の文章をつくる。

一方、新HSKの作文は、作文というより「要約」である。


最初「作文は要約だよ」と聞いて、「ああ、旧HSKより簡単かも」と思ったが、
大間違いだった。


まず、1000文字程度の長文が与えられ、10分間それを読む。

その後、400字程度でその長文の要約を書く、ということなのだが、
書く際にはもとの長文の紙は回収されてしまうので、見ることはできないそうだ。

解答用紙にメモをとってもダメらしい。

何回か、練習問題をやってみたが、全く歯が立たない。


長文のあらすじを理解することはできるが、いざ書く段になると、
書きたい内容は思い浮かぶのだが、それを中国語の文にすることができない


「彼は一見つまらない仕事の中でさえも、学ぶことができることはたくさんあるのだ、
ということを彼女に伝えたかったのだ」

"つまらない"ってもとの長文ではなんて書いてあったっけ? 覚えてない!
仕方がないから"简单"で代用するか? でも意味が変わってくるなあ...


「上司の費用精算処理代行からから得られるものは大きい。
どのように費用を使うかは会社の活動そのものなのだから」


"費用を使う"ってどう書く? "做费用"? それとも"花费用"? なんか違うような...


こんなことを考えているうちに制限時間があっという間にきてしまう。


つまり、長文の意味がわかるだけでなく、要約を書くために必要な情報
(ストーリーだけでなく、単語や言い回し)を
全部頭の中に記憶しておく必要があるということだ。


あるいは、長文と同様の内容を自分の言葉で表現できるだけの作文力をつけて、
記憶力を補う必要がある。


このままでは、まともに400字なんて書けないので、何か対策を考えなくては。


あと、くだらないのだが、超根本的な問題として、

そもそも、正しく書けない、または書くのに時間がかかる簡体字が非常に多い

というのもある。最近は手書きの機会なんて全然なくて日本語の漢字も
かなり怪しいので、ある程度仕方がない気もするが、これも困ったものである。

2012年2月5日日曜日

読書 「8分钟的温暖」と「凉宫春日的忧郁」  (3)

再び「8分钟的温暖」。

少しびっくりしたのが、小説の中で参照される「日本関連の話題」が
意外と多かったところである。

たとえば、
・「道明寺」のようなキャラは現実にはそういない。

とか、
・あの4人は「F4」だ。といってもFはFatのFだけれど。

といった表現があったりする。

また、主人公の女の子"顔泽"が好きな人"李霄"にあげるプレゼントを悩んでいると、
"贺新凉"が「彼はEveryLittleThingが好きだからCDあげたら」とアドバイスするところもある。

あと、これは"贺新凉"のキャラ設定に依存していると思うが、彼が"顔泽"に向かって、
・クレヨンしんちゃんみたいな眉だ
・目の周りのクマが夜神月の敵役みたいだ(デスノートの"L"の顔を思い出してください)
などと言う場面もある。

さらに「千と千尋の神隠し」に言及した場面もある。

少なくとも、この小説を読むような若い人にとっては、これらは「前置きなしで
いきなり話題に出しても話が通じる存在」だということだ。

まったく、コンテンツの影響力の大きさを再認識させられる。


あとちょっと面白かったのが、登場人物たちがビックリしたときに言う「哈啊?」という言葉。
想像だけど、これも日本語の「はぁ?」からきてると思うんだよねえ。
つかわれるシチュエーションがそのまんまなので。


さて、「8分钟的温暖」というのは、

>いま、この瞬間に太陽が消えてなくなっても、地球上にいる我々は、
>8分間後になって始めて気がつく。その8分間はいままでと変わらず地球は暖かい。
>太陽はもうなくなっているのに。

ということだそうである。

全体の展開からみると、主題は、

「あの人がどんなに大切な人だったかは、
いなくなって(しかも少し時間が経って)から始めてわかる」

という感じかもしれないが、まあそんな単純なことではなさそうな気もする。


春節休みで、両方やっと読み終えた。

2012年2月3日金曜日

読書 「8分钟的温暖」と「凉宫春日的忧郁」  (2)

一方の「凉宫春日」は、これがまためちゃくちゃ読みやすい。


いちおう、念のために書いておくが、
私は以前「凉宫ハルヒ」の名前を聞いたことはあったが、
本は読んだことはなかったし、アニメも見たことはないので、
ストーリーは知らなかった。

なぜ名前を知っていたかというと、 「ゲーム的リアリズムの誕生(東浩紀著)」という本を
読んでいたことと、フジテレビTWOでやってた「平野綾だけTV」を見たことがあったから。


「8分钟」は、1時間で10ページぐらい読めればよい方だが、「凉宫春日」はたぶん倍以上いく。

これは、もともとライトノベルが読みやすいからなのだろう。
たぶん日本語で読んだら1時間ぐらいで1冊読み終えてしまうと思う。

ただ、前回書いた話の逆で、中国の読者は日本の高校での毎日が
あんまり実感できないだろうから、その辺は理解しにくいんじゃないかと思う。
部活動がどういうものか、とか。

「8分钟」でも主要登場人物の" 贺新凉 "がバスケ部だったりして、普通の部活動もあるようだが、
一方、主人公の"顔泽"は「体育部幹事」とかいう役職をやってて、
どんな仕事かよくわからなかった。どうも学校の体育祭(体育节)の時に忙しいようなので、
部活動というより自治会みたいな仕事のようだ。


「凉宫春日」の話に戻る。


この本の主人公は日本語では「キョン」というあだ名で呼ばれているのだが、
翻訳は「阿虚」になっている。阿は名前につける愛称(xxxちゃんと呼ぶ場合の"ちゃん"に
ちょっと近い)なので、キョンは虚、と訳したことになる。

きっとどういう字を当てればよいか悩んだことだろう。



ストーリーとかはネット上にいくらでもあるだろうから書かないが、
小説なのに、まるでマンガを読んでいるような気にさせられるところにもっとも驚いた。

文章の表現形式の問題なのだろうか。
それとも、ストーリーがいかにもマンガ的だからか?


どうでもよいことだが、これを読んで、「セカイ系」や「ハーレムもの」といった
言葉の意味が少し分かった気がした。ついでに言うと、「セカイ系」の元祖というか、
根っこのところには「ドラえもん」があるんじゃないかという気もした。

まあ、ともあれ、もうこの一冊で十分、という感じはある。

2012年2月1日水曜日

読書 「8分钟的温暖」と「凉宫春日的忧郁」  (1)

前に書いたように、この2冊は昨年の大晦日に買った本である。

両方とも高校が舞台の話だが、テイストは全く異なる。

「8分钟的温暖」が中国文学界でどういった位置を占めているかよく知らないが、
日本のライトノベルとは違って当然なのだが。

本の装丁は「8分钟」は純文学っぽいが「凉宫」はハルヒが表紙でいかにもライトノベルっぽい。

まずは、「8分钟」から。

主人公は"颜泽"という女の子で、彼女と同級生の日常を通じて、
微妙な人間関係や恋愛模様が淡々と描かれる。


中国語という観点だと、私にはめちゃくちゃ難しくて、わからないところが非常に多い。

主人公や友達の心理描写には直接的な表現は使われないし、
成語みたいな表現が非常に多い。知らない単語もたくさん出てくる。

しかも中国の高校生活の常識がわからなくて「このイベントは何なんだ?」という感じで、
想像力で補うことが難しい。

この本はまず、ディベート大会、みたいな場面からスタートする。
「勇者と智者はどちらが勝つか」といったお題で、三国志の例を挙げて双方が論陣を張る。

中国の高校では、こんなディベートイベントが普通なのだろうか。
なんか、アメリカみたいである。

こういうのを読むと、やはりこういったところで日本はどこの国にもかなわないなあ、と思う。

世界的に見て、日本はそれなりに経済的に大きな国なわけだが、
外交を見ても、議論下手というか、交渉下手さは際だっている。
なんというか、「したたかさ」に欠けるように思う。

日本人も、欧米に対しては「何考えてるかわからない東洋人」を演じることで、
若干煙に巻くこともできるが、対中国ではそれも通じまい。

日本人の強みってなんなんだろう、と思う。
短期的には結果が得られなくても、長期的視点に立って頑張れる勤勉さぐらいか?

まあ、それはともかく、頑張って読んでいく。