2012年10月6日土曜日

頭がいい

会社で、中国日本間のテレビ会議の時に耳にした日本語の会話。

中国メンバー「こんにちは」
日本メンバー「こんにちは」
中国メンバー「頭はいいですか?」
日本メンバー「えっ?」
中国メンバー「前回のとき、頭痛がする、と言ってたので...」
日本メンバー「あー、そういう意味ですね」


このようなケースでは、「頭痛はよくなりましたか?」などと
「頭」ではなく「頭痛」という表現を使わないと誤解になる。

あるいは「よい」という表現を使わずに「頭はもう大丈夫ですか?」と言うか。

ただ、この場合万が一「もう」という副詞を省略して
「頭は大丈夫ですか?」とやってしまうと、
もっとひどい誤解になってしまって険悪になっちゃうかもしれない。

経験から言って、英語にしても中国語にしても、
外国語の副詞を使いこなすのはかなり難しいので、
こういった副詞の有無で意味が大幅に変わってしまう言い方は
避けたほうが無難であろう。

なんか、日本語を学ぶ人へのアドバイスみたいになってしまった。

ちょっと中国語の話も書いてみる。

彼が「いいですか?」という表現で言いたかったのは中国語の"好了吗?"であろう。

中国語で「頭が"好了"」と言った場合、考えられる可能性は
「以前状態が悪かったのがよくなった」
というような、健康状態のことに限られるように思う。

すなわち日本語で言うところの「頭がいい」という表現は中国語には存在しない。

「安倍さんって頭いいよね?」を中国語に訳すと、
"安倍先生很聪明吧?"になる。


日本語の「彼は聡明だね」と「彼は頭いいよね」を比べると、
「彼」の印象はかなり異なる。

「聡明」と言われた「彼」は、なんとなく、
清潔で上品でそこそこハンサムな青年の感じがする。

一方「頭がいい」と言われた「彼」は、
特定の見た目のイメージがあまり浮かんでこない。
子供かもしれないし、青年かもしれないし、安倍さんかも知れない。

つまり「頭がいい」という言い方のほうが汎用性がある(特定のコンテクストと
結びついてない)、ということなのであろう。


中国語の「聪明」は話し言葉に頻繁に登場する。

おばあちゃんが孫に対して「よくできました! とても聪明」と言ったりする。

私もお世辞で言われることもある。
「こんな難しい中国語の言葉知ってるんだ。聪明だねえ」

中国語での「聪明」の使われ方は、日本語の「頭いい」の使われ方と
全く同じように私には思われる。


倉谷直臣というひとの「英会話上達法」という本に書いてあったことだが、
日本で使われている外来語は、その言葉が入ってきたときに使われた用法に限定され、
もとの汎用性が失われている、という話がある。

「聡明」という言葉が昔の中国から昔の日本に外来語として入ってきたときに、
やはり汎用性が失われてしまったのかもしれない。