2013年1月25日金曜日

"対"は一回でいい?

中国語の勉強を始めたとき、最も先に覚える言葉の一つに"対"がある。

"対"には日本語でも使うのと同じ意味もある。
たとえば「対面」は「面と向かって」とか文字通り「トイメン」の意味だし、
「対于~」は「~に対して」という意味である。

中国語の"対"にはその他に形容詞としての用法もあって、
その際の意味は「正しい」とか「その通り」になる。

相手の言っていることへの同意(あなたの言うとおり)を表現する言葉として、
実際の会話では非常に頻繁に使われる。

「これは、こうすればいいんですか?」
「対!(そうです)」

この「そうです」という意味での"対"の実際の使われ方は、
いろんなバリエーションがあり、繰り返しで使われるケースも多い。

一回の場合        「対!」「対的!」「対啊!」
二回以上繰り返す場合   「対対対!」「対対対対対!」「対、対対対!」

「二回以上の場合」を使うのは主に男性であり、
なんというか「テンションが高いほど回数が多い」傾向があるように思われる。

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テレビで見る「名探偵コナン」で、中国語吹き替えされてるコナンは
頻繁に「没錯」というせりふを言う。

この「没錯」も「その通り」という意味を持っているように思われるが、
どちらかというと「その通りで間違いはない」と「間違いない」部分が
強調されているように思われる。

普段の会話で「没錯」と発言している人には遭遇したことがないので、
口語といってもあまりくだけた感じではないのであろう。
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"対"の使われ方バリエーションがたくさんあるのは、
もしかして、日本語で言うところの、
「そうです」「その通りです」「そうそう、そうなんだよ」「その通り!」
といったニュアンスを全て"対"という一つの文字だけで表現するための、
ある意味苦肉の策的なものなのではないか、とも思う。

実際話すほうの立場に立ってみると、
"対"だけだとさびしい感じもするし、
"対的"だと、ちょっと女の子みたいな感じになっちゃうし(偏見かもしれません)、
"対阿"だと威勢がよすぎるし(偏見かもしれません)、
"対(dui)"は語呂がよくて言いやすいこともあって、
つい「対対対対対!」と5回ぐらい繰り返してしまう。

でも、そのたびに「"はい"は一回だけ!」という教えを思い出して
罪悪感を持ってしまうのは、日本人の性(さが)というべきか。

2013年1月18日金曜日

四と十(おまけ)

本文はこちら。

またまた、会社の車に乗っていたとき、運転手さんと私の同僚との会話。

運転手さん「最近忙しいんですよ」
同僚   「そうですか」
運転手さん「先週なんて泊まりで杭州と南京を4日間回ったんです」
同僚   「10日間とは長いですねー」
運転手さん「10日じゃなくて、4日間です」
同僚   「あ、間違っちゃいました。ところでどんなホテルにとまったんですか?」
運転手さん「それが結構いいホテルだったんですよ」
     (以降ホテルの話題が続く)

中国人でも四と十を聞き違うんだ、ということにビックリというか、少し安心した。

2013年1月15日火曜日

流線形の車

会社の車に乗っていたときの話。

一緒に乗っていた私の同僚と運転手さんが世間話を始め、
その中で車の話になった。

運転手さん「あなたは新しい車買わないの?」
同僚   「いやーいま欲しい車もないし」
運転手さん「マツダの新しいRVいいよ」
同僚   「7人乗りのやつ? 広くて便利そうだね」
運転手さん「"流線形"なんだよ。日本車って"流線形"なんだよね」

実際には運転手さんは"蛮(有)流线形的!"と言っていたと思う。
(有があったかどうかはちょっとよく覚えていないが、
後から考えると、流線形は形容詞ではないような感じがするし、
そうだとすると文法的にあったほうが正しいようにも思われる)

"蛮"は口語でよく使われる"很"と同じ意味の、形容詞の前につく言葉だが、
度合い的には"很"より強い感じがする。

つまり"蛮好的!"の方が"很好的!"より、よさが強調されている感じがする。

運転手さんは、単純に「車が流線形だ」という事実を述べていたわけでなく、
明らかに「外観が格好よい」という意味で言っていた。

日本では、車に対するほめ言葉として「流線形だよね!」
などという言い方をすることは決してしないであろう。

「流線形だ」というのは事実を描写する言葉であって、
評価する言葉ではないからだ。いまどきの車は程度の差はあっても、
ほとんど全部「流線形」と形容できるだろうし。
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上海は日本車も中国車も走っているが、多いのはGM(ビュイック)とVWである。
たぶん地元の会社と合弁して工場を持っているとかいうことが
関係しているのだろう。

特にVWは上海での歴史が古いらしく、私が上海に来た5年前は、
日本では10年前ですら走っていないような
懐かしい箱型デザインのサンタナばかり大量に走っていたが、
最近はほとんどみなくなった。

GMもVWも今の新しい車は日本車同様十分「流線形」だと思うので、
運転手さんはきっと日本車のファンなのだろう。

こういう人が、デモで壊される心配をせずに日本車を買えるような環境に
早くなってくれるといいと思う。

2013年1月8日火曜日

费城老鹰队

ある翻訳本を読んでいて、

「费城老鹰队と纽约巨人队の試合」

という言葉がでてきた。

「纽约」は中国語でも日本語と同じでニューヨークのことだし、
「巨人」は日本のプロ野球にもあるとおり、ジャイアンツのことだ。

日本のプロ野球のジャイアンツは「巨人軍」だが、
中国語ではチームは「队(隊)」になる。

ニューヨークジャイアンツといえば、プロアメリカンフットボールリーグである
NFLの名門チームの一つである。

「じゃあこれはNFLの試合の話をしてるんだな」

ということはすぐに分かった。

ちなみにその話は、著者の学生時代に、
NFLのひいきチームが違っていていつもけんかになるのに、
その人とは結果大親友になった、という心温まるエピソードだった。

「しかし、ところで、相手チームはどこなんだろう?」

老鹰? 鷹といえばホークで、ホークスといえばアトランタホークスだけど、
NFLじゃなくてNBAだから、異種格闘技戦になっちゃう。

NFL好きで、チームの名前は全部言えると自負している私としては、
こういう「分かりそうで分からないこと」は非常に気になる。

ちょうどその直後が中国語学校の時間だったので、
先生に聞いてみた。

「费城ってアメリカの都市らしいんですけど英語でなんていうところですか?」
「えっ?うーん、费城は知ってるけど英語でなんていうかわからない...」
「(絶句)....」

もちろん先生は大卒で英語も堪能である。それなのにわからないなんて。

中国語が外国固有名詞を短縮表現してしまうことの弊害、
と言えるだろう。

日本語の場合は、長くなろうがなんだろうが基本的に全部カタカナ表記するから、
わからないなんてありえない。カタカナを元にアルファベットを
再構築できるからだ。

学校が終わって百度百科で調べてみたら「费城」は
「フィラデルフィア」のことだった。

ちなみにフィラデルフィアを全部漢字で書くと「费拉德尔菲亚」

つまり「费城老鹰队」はフィラデルフィアイーグルスだったのである。
確かに鷹と鷲も似てるわけだが...

いつものことだが、こうして分かってみると「こんな簡単なことに
なんで最初から気がつかなかったんだろう。ジャイアンツと同じNFC東地区の
ライバルチームなのに」と、くやしい思いをする。